鹿の食害から幼木を守りつつ、同時に土壌改良することで強い樹木を育てる「子守木(こもりぎ)」。つな木を利用した支柱は、幼木の成長に合わせてサイズが変更でき、成木に育った後はベンチに組み換えて木陰に人が憩う“場”を生み出します。人と鹿と樹木をつなぎ、みんなにやさしい持続的な悠久の都市公園を目指す取り組みです。
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「子守木プロジェクト」は㈱日建設計とArchiTech㈱が開催した木材を使った社会課題解決の学生アイデアコンペ「第1回つな木コンペ『もち(森+街)をつくる』」において優秀賞を受賞。全国の街の樹木が抱える土壌環境の問題や人の関心不足による不適切な支柱の問題の解決を目的とし、「守っている幼木をいかに育てるか」という育成方法や「地域の人々が街の樹木を愛おしむ仕掛けを作る」といった仕組みづくりのみならず、地域課題である奈良公園の「鹿の食害被害」をも解決する方法までを総合的に提案した内容が高く評価されました。
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支柱には対候性に優れた亜鉛ニッケル合金めっきを施したつな木クランプ金具を使用。鹿の頭が入らない間隔を割り出して地域材による支柱を組み立てます。
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途中の節を抜いた割竹を地中に埋めて支柱となる木材を差し込みます。割竹底部の節には複数の小さな穴が開いており、投入した液肥が地中に染み出て、幼木の成長を促します。子守木は幼木の成長に合わせて、より広い間隔で新たに割竹を埋設して、より大きな支柱に組み換えます。元の残った割竹も腐食するまで通気浸透性を保ち、土壌改良を続けます。
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子守木は木材の腐食や幼木の成長に合わせて幾度となく組み換えます。将来的には公園内で伐採した樹木を製材して利用することで、小さなエリアで樹木を有効活用するサイクルを作ることができます。また、つな木構造の支柱はイベントとして公園の利用者たち自らが楽しみながら組み換えできるため、木々への愛着や人と人のつながりも深めることができます。樹木が成長した後は支柱をベンチに組み換えて設置すれば、木陰に人々が集う憩いの場が生まれ、賑わいのある公園となります。